2008年5月30日金曜日

ストレスのない音



ボトルネックの無いシステムは、容易にストレスのない音を実現する。

良質な15インチのユニット・・・・ (できればアルニコで高域が綺麗に伸びているもの 、オーバーダンプではないもの )

2インチドライバー (できれば高域の伸びがよく、ピーク成分などの暴れのないもの)

大型ホーン   (できればカットオフ400以上でスロートは最短、高域がビーム状にならず、変な絞り込みがない比較的ストレートなもの ホーン内の内容積はあった方がよい。)

大型3極管の球アンプ+アムクロン (低域用)

マルチ  (デジタル)チャンデバ直結

適度にダンプされたバスレフタイプの大型スピーカーボックス・・・・・ (出来ればスリットか、マルチスリット)

それに、やや太めの鋼線、硬い被覆のケーブル・・・・・・

充分に対策されたCDプレーヤー、または良質のアナログプレーヤーとMCカート、ヘッドアンプ

といったラインナップ。

かなりのじゃじゃ馬だが、これをなんとか上手く制御すると

実にストレスのない音がのびのびと出る。

ウーファーやドライバーの振動板を、後ろから棒で思いっきり叩いているような、非常に瞬発力のある音が出てくる。

スキッと抜けるような音

以下、擬音語のオンパレードとなるが・・・・・・

シンバルが パカーン、ジュワーン
サックスがブリブリ、ゴリゴリ 、ブオー
ドラムスがパンパン、バキバキ 、ド、ド、ド
ボーカルがスカーっと伸びる。

ボリュームを上げても音が潰れない。

また、キンキン、ギャーギャーといった不快な音も出ない。

ハイスピードでありながら

同時に図太く、厚みのある音、

ソリッドな立体音像がビシッと前後左右に分離して浮かぶ・・・・・。

音が前に飛ぶ。。。 また奥深く響いてくる  天井の高さ、 あるいはライブハウスの狭さ・・・・熱気

快感である・・・・・・・。なんとも爽快な世界。


ジャンク品やプロの放出品とかを少しずつ揃えれば、一回の支出も、総額としても、かなり安いし。

音に飽きたら、あらゆるところに、どんどん手を入れることが出来る。

バランスが整うと、クラッシックでもポップスでもロックでも充分イケル。

こういう世界を知ると、いわゆる銘器とか、超高級品の類は、さほど必要性を感じなくなるかも。

ま、とにかく、ストレス発散には最高である。

2008年5月29日木曜日

自作ダイアフラムの微調整


床に転がした状態で音出し 

巨大な磁気回路 馬蹄型アルニコVマグネット

フィールド型磁気回路の時代に、省電力という軍の要求に沿ってアルニコマグネットへの置き換えが進められたらしい。

アルティック604はもともと海軍のソナー用に開発されたという話もある。確かに白い塗装の初期型604は船体部品の塗装のようにも見える。残念ながら大戦には間に合わなかったらしいが。

ちなみに、この206AXの前身である106AXや 、さらに一つ前のP52A(これはウエスタンがモニターとして使用したらしい)などは、真っ黒なフレーム、鉄、アルニコ剥き出しの角張った磁気回路など、随分とスパルタンな印象で、いかにも業務用の趣がある。

(音もまた外観に似て、中高域が若干乾いた感じに聞こえた)

そんな時代の遺産?を受け継ぎ、アメリカが最も豊かな時代に開発されたのが206AX。

今日気づいたのだが、この206のダンパーには、なんと1940年製造を示唆するマークが記されていた。

206AXの製造年代には諸説あり、50年代からとの説が有力なのだが、40年代の説、さらに戦中あるいは戦前に開発されたとの噂すらある。

1940年製造のダンパーが50年代まで在庫されていたのだろうか、あるいは40年代に作られたのだろうか、などと考えるだけで楽しい。

フレームがライトブルーに、マグネットが赤く塗られているのが、いかにも民生用のtru-sonicらしい。



エッジはオリジナルではない。



ダイアフラムのセンタリングはなかなかシビアな調整である。

このフラムを固定する3本ネジを少しでもずらすと音がガラリと変わってしまう。

何回かの試行錯誤の上、微調整したところ、さらに音抜けが良くなった。

2008年5月27日火曜日

206AXA 自作ダイアフラム 3


なんと、見た目はボロボロの手作りフラムが、バーンイン3日目にして、割と真っ当な高音を出すようになってしまった・・・・・・。  

聴感上はあまり違和感がない・・・・単に駄耳なだけかもしれないと逆に不安になる。
むしろオリジナルよりも高域が若干伸びてるかも・・・ (苦笑 )

これは206AXAの超強力な磁気回路のなせる技なのだろうか・・・・・・・、

オリジナルのフラムよりもアルミが薄く、軽量なので、結果が良いのかもしれない。

理由は不明だが、とにかくこれで、ステレオ ペアを組める可能性が出てきた。

予想外の結果であるが ありがたいことである。

2008年5月26日月曜日

206AXAのフラム 無謀なる自作のココロミ2




例の自作のダイアフラムだが、音出しを続けている。

さらに調子が出て、予想以上良い音になってきた。 なかなかイケル・・・・





コンプレッションドライバーのダイアフラムは、スピーカーパーツの中でも非常にデリケートな部分とされている。

純正品であっても、新しいフラムに交換した後や、しばらく鳴らしていなかったものを稼働した際には、ドライバーの音がハッキリ歪み、高音の伸びが失われたりすることは良く経験するところだ。

また逆に、硬かった音が、エージングでどんどんナチュラルになったりする。

金属のいったい何が変化して音が変わるのかは謎である。



ジャズのシンバル音の入っているCDをかけると、音の変化がハッキリ分かり興味深い。

現状では若干の荒さはあるものの、かなりしっかりとしたシンバル音が再生されるようになってきた。

ビルエバンスのモントルーやエクスポレーションなどで シンバルがジャーンと鳴る時には、 耳をそばだてて毎回音の変化を楽しんでいる。

(フラム自作という、密かな楽しみができそうである・・・・笑)

2008年5月25日日曜日

206AXAのフラム 無謀なる自作のココロミ

以前から手元にある206AXAには、コンプレッションドライバーのフラムがない。

クラッシックなドライバー故、耐入力は高くないので、うっかり飛ばしてしまったり、経年変化などで、フラムはどんどん失われていると思われる。

フラムを抜き取ってからebayで売り飛ばされている、そんな欠品の206が、完璧とか、音は凄いとかで、出品され・・・・・・・それを知らずに、誤って落札してひどい目に遭っている。


ebayはこれだから・・・といっても206AXはコーンからもそれなりの高音が出るので、気がつかなかっただけなのかもしれないが・・・

供給されるパーツも、代替え品も全くない状況だ。

噂によれば中国か台湾辺りで特注可能らしいのだが、少量生産ではとんでもない価格になるのは明らかである。また音がどうなるか保証はまったくない。


で、戯れに、コンプレッションドライバーの勉強を兼ねて、無謀にも、フラム(もどき)の自作を試みた。

そこらへんにある適当な素材での、やっつけ仕事だ。

手巻き寿司ならぬ、手巻きボイスコイル・・・・・ ガラ巻きである。



ダイアフラムは、アルミを手で絞って成形する。案の定、しわしわになってしまった。
しわ伸ばししても消えない、で、気分はリブ入りのアルミフラムってことで・・・・ 爆

こうして、工作していると、大昔子供の頃に、「子供の科学」とか、「学研の科学」とかの記事で、スピーカーを作ったのを思い出した。

ぶーぶーと音が出て、おおいに感動したものである。


それにしても、ドライバーの磁気回路のギャップの狭さには閉口する。少しでもボイスコイルが歪んでいると、すぐに接触し、擦り音が出てしまう。

ボイスコイル巻は、結局3回ほども試行錯誤した。


苦闘の末・・l・・・



なんとか形になった。

細かく見ると、情けない外観ではある。

皺皺である・・・・・・。エッジもなにもあったもんではない。




装着状態。




見た感じは笑っちゃう感じだが

音が出た・・・・・・・。

感動である。


能率は低いけど、小音量ではイケル、予想外にまともな、いい音だ・・・・爆

当たり前だが、アルミのフラムの音がする。優しい高音

アルミソフトドームホーンとでも呼ぼうか・・・・

調子に乗って大パワーを入れると、ボイスコイルが擦れるのか、いきなり音が歪む。

だが、中小音量では問題なく、だんだん良い音で鳴ってきた。

これは面白い・・・・・。しばらくはまりそうである。

ボイスコイルの擦れが取れたら、そのうち特性を測定してみようかと思う。

これを使うかどうかは別として、こういう工作はコンプレッションドライバーの良い勉強になる。

2008年5月24日土曜日

Tru-sonic 206AXA の高音

Tru-sonic 206AXA の高音について

マルチレルラーホーン、1.5インチダイアフラムのコンプレッションドライバーである。
フェーズプラグは古典的な多穴のホールで、磁気回路はウーハーと共用している。
スロート径は1インチ。

ダイアフラムは比較的厚みのあるアルミ製で、エッジは同心円の溝状になっているようだ。

よく比較されるアルティック604の高音と比べると、かなり異なるキャラクターだ。

なんともいえない、甘美な高音である。604を男性的と言うなら、206は女性的な音ということになるだろう。

ジャズのシンバル音は604の様にダイナミックには鳴らない。あくまで控えめな印象だ。また、ハイエンドは余り伸びていない感じもある。 

はっとするようなダイナミックさは無いのだが、聞き込むと、しっかりとした厚みもあり、なかなか質感も高いことがわかる。8セルのマルチセルラーホーンにより、指向性もきちんとコントロールされており、自然な広がり感だ。 ビーム状になりがちなショートホーンのキャラクターが、非常に良く押さえ込まれている。これは大変重要な処である。

(ビーム状の高音は、長期使用で違和感が出て来て、結局手放すことになることが多いのだ。)

また適度に厚みのある高音は15インチのウーハーとの繋がりが自然で、クロスオーバー付近の音のコントロールがしやすい。

ジャズをかぶりつきで聴く感じを求めるならダイナミックで切れ込みのある604、長時間の試聴や、しっとりとボーカルを聴くなら206が良さそうな感じである。

2008年5月23日金曜日

モノラル


モノラルのアルバムは、オーディオ的には、なかなかピンとこない場合も多いのだが、好録音のアルバムを、当時の優れたスピーカーで再生すると、なかなかすごい世界を展開してくれる。

当時のレコーディングエンジニア恐るべし・・・
奥行き、広がり、厚み、張り出し、リアリティー、文句なしである。

もちろん、このアルバムの収録時に生産されていた超高級ユニットである、206AXA恐るべし・・・・・、である。 恐ろしくハマル・・・・・

死蔵している耳タコのアルバム群を、いそいそと聴き返したくなるほどの新鮮な感動が得られるなら、新規の機器導入は大成功ということになる。

ヘレンメリルの歌唱力、改めて感心・・・・である。思わずニューヨークの街並を思い出してしまった。再開発が進んだとはいえ、ストリートのくすんだ雰囲気は残っているので・・・・。

またクリフォードブラウンのソロ、これがとても清涼感があってすばらしい。クインシージョーンズのアレンジと言われるが、スコアも用意されていたのだろうか、あるいはアドリブなのか、など思いを馳せながら聞き入ってしまう。

これに、モノラルのカートリッジと、プレーヤーなんかそろえてしまったら・・・・・・・・沼が深すぎ・・・・・さすがに止めておきます。

2008年5月22日木曜日

到着




到着・・・・
モノーラル一本のみ
コーナー型 スリットバスレフ ユニットは床すれすれにマウントされている。
低音は部屋の壁を利用し、コーナー設置のホーン効果で増強する設計だ。
家族はあきれ果て・・・・・、子供もチクチクと冷やかしてくる。
配送会社の担当者は、スピーカーと部屋の様子に思わず仰け反り、クスクス笑っていたらしい。
まっとうな反応と言えるかも・・・・・・。

2008年5月21日水曜日

空気の掴み加減・・・・・ ESL 63pro

極小音量で聴くなら、ESL 63pro。非常に気に入っている。 音やせしないのが特徴。

ESL 63proの修理が終わって、初めて試聴したマイスルのリラクシンで、マイルスが早口でボソっと指示を出してるのが、やけに生々しく 驚いたのは記憶に新しい。

トーンコントロールで僅かにバスブースとした方がバランスが取れる場合もあるのだが、とにかく自然で厚みのある音が出せる。コンデンサー型とは思えない。フルレンジが鳴っている感じである。しかも極微弱音はコンデンサー式ならでは、である。

フィリップスが長年モニターとして使っていたようであるが、同レーベルのホールトーンをきれいに収録するポリシーと、このESLは良くマッチしたのではないかと思う。

高音から低音までのパルシブな音をオシロで観察すると、矩形波などが非常にきれいに再生されていることが判る。 ダイナミック型などは歪んで悲惨な波形になることがほとんどなのだから大変な性能だと言える。

このスピーカー、振動板面積は大きい。この面積がキーになるのだと思う。

平面振動板でそれなりの量の空気を揺るがすには、面積が必要になってしまう。振動板は大きくなると分割振動などの制御が大変だがコンデンサー型にはその問題がない。

設置面積と後方のスペースの確保は厄介で、経年崩壊するエレメントの修繕はなかなか大変なのだが、苦労の甲斐のあるスピーカーだと言える。

クラッシック向きとされているが、アムクロンでドライブする63proは、深夜小音量でジャズを聴くのにも重宝する。パルシブな音がシャープなので、案外はまるのだ

2008年5月20日火曜日

大物が・・・・

突然のこと、ある「大物」が到着予定となりました。

はたして狭いスペースに無事収まるのか かなり不安・・・・・汗

ついでに家族からの非難も・・・・・大汗

モノーラル専用というのも始めての経験です

(もともとステレオペアではスペース的に収まりようもないモノですが)

実際に入れてみないことには、どうなることやら 想像も付きませんです・・・・ハイ

2008年5月18日日曜日

音量のこと・・・・ ESL63pro

我が家のオーディオルーム(・・・・と呼べるかすら微妙?)は薄い壁でお隣のお住まい(部屋)と接している。

ちなみに、お隣サンが就寝するときの、蛍光灯のスイッチを切る音が聞こえてしまうぐらい、恐ろしく薄い壁である。

私は夜間の試聴がほとんどなので、通常は中ー小音量で聴いている。

時には中ー大音量で聴く時もあるが、アルバム一枚通して中ー大音量で聴くことは希 ・・・・涙。

できれば大音量でおもいっきり行きたいところだが、お隣の在室時間は長くて、壁は薄いので、ごくたまに可能である。

中大音量と言っても、おそらく、他のオーディオブログの方々と比べたら、圧倒的に小音量で聴いていることになると思う(涙)

能率91dbの我が家のメインスピーカーを、たった2.5W出力ののVT52シングル真空管アンプで駆動してもパワー不足と感じたことは一度もない。なにしろボリュームの位置はせいぜい10時で、大音量は12時 ボリュームいっぱい(4-5時)で聴いたことは一回もないのだ。

昔、オフ会っぽく、夜中に試聴会をやって、ドンチャン騒いだ時があったが、案の定厳しいクレームが来てしまいました。(大反省です・・・・・。)

都心のボロ屋の悲しさである・・・・。が、めげてはいない。

たとえ小音量、微少入力でも、機器の選択と調整を頑張れば、音質、質感、プレゼンスなど、それなりのモノを得ることが可能だからだ。

ちなみに我が家(または仕事場のオーディオセット)では 

深夜 小音量の場合 QUAD ESL63Pro (ジャンク再生品)  

中音量で聴く場合   自作フォステクスRPシステム(インフィニティIRSシリーズと同系列のユニット使用)

中大音量(職場でたまに)の場合  ALTEC 299+JBL 2220B使用の自作2ウエイホーンシステム

で聴いているが、どのスピーカーも、音量をかなり絞っても、それなりにバランス良く鳴るようなチューニングを心がけている。

 機器によって持ち分というか、得意な音量の領域があるらしく、やはりホーンシステムは有る程度のパワーをぶち込んで、大音量で聴けば自然にノリが良くなる。

一方ESL63は、深夜、音楽を聴きながら(部屋の置き時計の秒針の音が常に聞こえるぐらいの)小音量でも、充分な分解能、微少音のリニアリティーを持っている。

かなりボリュームを絞っても中低域の厚みが残るところも非常に好ましい。

ESL63の小音量時の表現力、バランスは絶妙で、特にパルシブな音の再生力や、声の再生のナチュラルさは抜きん出ていると思う。

しかし発売からかなり経過しているので、モノによっては、購入後すぐ故障して、エレメントからバリバリ、チリチリと異常放電を発生するのはザラという危険な商品だが・・・・中の構造を見ると、そういうのは仕方がないのかなと思う。

我が家のESL63proは、もともとズタボロのジャンク品だったので、修理しては壊れ、また修理しては壊れ・・を繰り返した。

まともにメーカー修理に出すと新品を買う方が安いぐらいかかるから、感電しないようにビクビクしながら自分で勝手に直してきた。 結局4つのエレメントは全部手を入れる羽目になった。4(低音2+中高音2)X2(左右)X2(表裏)=16箇所だ!

修理は非常に面倒で、まったくイヤになるのだが、根性しかない。

とにかく小音量のニアフィールドリスニングの音が良いので、深夜用としてはとても良いスピーカーだと思う。

2008年5月15日木曜日

悩ましき中国製211シングルアンプ 2

バランスの良くない、中国製211シングルアンプの調整の続き

内部はバラックながらも、特に音質劣化を生じるような問題点はなさそうに見えた。

また怪しげなトーンコントロールは、オーバーオールNFB量の抵抗切り替えによる調整に見えた。これもそれなりに納得できた。

(実は真空管アンプは初心者なので、この辺は余り詳しくない・・・・・。残念ながら、球の名前も、回路もまだ良くわかっていないのだ。)

そこで、音質劣化の原因として真空管を疑ってみた。211は割合としっかりしているように見えるのだが、それ以外は、古くて怪しげな中国球ばかりであったので、交換による音質調整を試みた。


まずは初段の12AX7であるが、なんと片方はかなり古い日本製らしく、もう一方はUSAのかすかな文字がある。明らかに左右異なる球なので、Philips ECGの軍用管、JAN 12AX7に変更してみた。

いきなり音がスムーズになり、音場がスッキリと広がったのにビックリである。

これまでは、何となくやせた音像、ラジカセ的な音場であったのだから、大幅な改善である。

これはいい・・・・。かなり得した気分である。

気をよくして、2段目の6SN7を手持ちのUSAやUSSRの軍用管と取り替えて試聴してみた。





まずはソ連製OTKとプリントされた6SN7を試す。
中域が充実して高域が引っ込む。全体のバランスはやや良くなったようだが、音場が狭くなり、高域の輝きも失われてしまった。音に翳りがあるというか、なんとなくほの暗いトーンで、これは余り宜しくないようだ。

次に、Philips ECGの軍用管の6SN7に変更、比較的新しく、ピカピカでコンディションの良い物(NOS)に変更する。
突然、バリッとした高域が復活し、音場は非常に広くなり、思わず 「オー」と声を上げてしまったほど、その変化に驚く。

しかし、じっくり聞き込むにつれ211の高域のキャラクターや、歪み感が強く感じられるようになる。全体にバランスが悪く、やや聞き疲れする感じなので、次第に満足できなくなってきた。


そこで、RCAの軍用球の古い物に交換すると・・・・






突然歪み感が消失、高域のキャラもあっさりと引っ込み、とてもナチュラルな音に変貌。しばし聞き惚れてしまった。なんとも劇的な音の変化である。


RCAの軍用球の代わりに、シルバニアの軍用球(または民生用の同等品)に交換してみると、音は殆ど変化無し。歪みのない良い音である。これはどちらも大当たりである。




後でわかったのだが、このRCAとシルバニアはラベルが違うだけの同じ製品のようである。


いずれにせよ、同一規格の6SN7で、これほどまでに音が変わるとは、驚きの連続であった。

結果として、非常に自然で、ほとんど歪み感の感じられない音が得られた。

さらに透明感のある広い音場、音像の質感が整い、音像が目前に迫るような、納得の音が出るようになってきた。

真空管の交換だけで、幅広いソースに対応することができる、バランスの良い音が、あっさりと出るようになったので、これはなかなか嬉しい。

使用した中で、コンスタントに良い結果を出したのは、いずれも黄金時代(?)のアメリカの軍用球であった。

軍用球は構造がしっかりしているので、比較的安定したパフォーマンスを発揮するようだ。

これは久々のヒットである。

結論として、この中国製の211アンプは、付属の(低品質な)真空管を、それなりのもの(定評有る軍用球など)に交換すれば、本領を発揮し、かなり高級なアンプに化ける。

これは非常にコストパフォーマンスの高い製品であることが分かった。

2008年5月13日火曜日

悩ましき中国製211シングルアンプ

ここ数日肌寒い日々が続いていている。発熱量の多い211シングルの真空管アンプがまるでヒーター代わりに活躍している。

これは299ドライバーの駆動用のアンプなのだが、ここは今のシステムの中で、かなりシビアな部分なので、なかなか思い通りには鳴ってくれない。


例の中国製211アンプ、価格の安さで入手出来たのだが、高域に特有のキャラクターがあるのが悩み。


おそらくトリタンフィラメントの211真空管の固有音+このアンプの味付けだと思われる。


フュージョン系アルバムのエレキギターや、ジャズのシンバル音など、211のぱりっとした感じの高域の輝きが音楽にプラスに作用する場合は最高に気持ちが良い鳴りっぷりとなるのだが、しっとりとしたボーカル物やオンマイクで収録されたサックスやミュート付のトランペットが、突き刺さるような刺激音になることも・・・・・バランスが崩れると、剃刀のような、かなりきわどい音を発する。


211の高域と他の三極管の高域の差は実際僅かなものなのだが、大型のコンプレッションドライバーは、これを大幅に強調して聴かせるため、なかなか厄介である。
211の高域から中高域にかけての力強さ、パワー感は大変気に入っている部分なので、出来ればこれを生かしつつ、高域のキャラクターを消したいところである。

どのように音質をコントロールすべきだろうか・・・・・・、カップリングコンデンサーかNFBの調整によるチューニングの可能性を目論んで、怖々内部構造を覗いてみると・・・・・、



ボリュームはアルプス製を使っている。
価格相応のそれなりのパーツという感じか?
それにしても凄いバラック状態である。
やっぱりかなり怪しい。
サブ基盤 1段、2段目
1段目12AXのソケット 絶縁は透明な接着剤? ちょっと怖い感じ。
右の巨大なソケットが211用、左のサブ基盤上のソケットは6SN7用。
フイルムコン以外に、小型のケミコンが多いのが気になる。抵抗の熱で早期に劣化しないのだろうか?
配線引き回しも乱雑。 無信号時にもノイズが多いのはこれが原因だろうか?
一回ばらして組み直したい衝動に駆られるが、一応状況は理解したし、明らかな不良個所、漏電しそうな場所も見つからなかったため、今回は改造せず、そのまま組み直した。

2008年5月6日火曜日

昨今のオーディオ事情とハイエンド・・・・とガラクタ再生

ワタクシ、実は仕事の都合で一昨年まで北米生活を強いられていた。帰国してから一気にオーディオ熱が再燃してしまったのである。

北米生活では基本的にオーディオ抜きの生活であった。それは仕事が非常に多忙で大変だっただけでなく、アメリカの特殊なオーディオ事情にもよる。

アメリカのオーディオ事情とは端的に言って、 カーステ、ラジカセ、安物のAVサラウンド カラオケ またはipodである。

それ以外は、いわゆる家電チェーン店、電気屋(ハードウエアストア)では流通していない。モノを置いていない。(唯一の例外がBOSEショップか?)

日本にドンドン入ってくる、ハイエンドのオーディオセットって、向こうでは 「何ですかそれ?」という珍しい存在。展示している店舗(?)は極限られており、近隣の店ではついに見ることも聴くことも出来なかったデス・・・ハイ。 フリーウエイを数時間走ってもディーラーが無い・・・・。

ハイエンドのオーディオセットはそんなとっても特殊な製品で、高級顧客を相手に個人的に商売するディーラーさん達が居て、高級なお客さん達に、とっても高級な物を勧めて販売する、それで商売が成り立つという世界らしい。(高級顧客サン達は通常、高級住宅地の最低数億、価格は天井知らずの、大邸宅や高級コンドにお住まいだ・・・・・。)

中には日本人にやや近い例外、非常に熱心なステレオファイルもいて、コストパフォーマンスの優れた商品を巧みに組み合わせたり、ガレージセール品やebay等で仕入れたモノを自力で再生したり、あるいは高額なオペアンプ等の電子パーツを通販等で仕入れて、大改造を加える強者がいたりもする・・・・例えば理系で電気工学系の凄く強い人 (オーディオ的にはアマなのだが・・・)がいるのも特徴 ・・・・・であるが、これらは少数派である。

向こうでは、私達家族は非常にキツイ生活だったので、そんな贅沢品とは縁はなかった・・・というか、家族や友人達と一緒に大自然の中でキャンプしたり、バーベキューしたりする方がよっぽど楽しかった。


カーステ、安物のAVサラウンドスピーカーでCDの音を聞いて2年間をしのいだ。その反動で、、帰国後オーティオにはまってしまったわけである。

ハイエンドオーディオとは、とってもお金持ちの方々の好む音にチューンされた、高級なオーディオセット(もしくはミニコンポ)なのですネ・・・・・・って、当たり前ですが、向こうの生活をするとその辺の収入に伴うヒエラルヒーが、骨身に浸みて判るようになります。

かのマークレビンソン氏などは、(時々アメリカ人にいるのですが例外的に極度に感性の鋭い)耳が極度に良く、しかも お金持ちの方々の好む音のツボを知り尽くしている方なのでしょう。

向こうの高級なリビングに行くと、すばらしい大理石のマントルピース、大理石または超高級フローリングの床、見事な調度品、窓の外には素晴らしい夜景、美しい間接照明が揃っており、そこにさりげなく自慢のオーディオセットや大画面のホームシアターセットが置いてある。音は基本的にはパワフルなシネマサウンドか、極美麗なBGM的サウンドであることが多い。

こういう成り立ちの商品なので、基本的にイヤな音が出ず、高級感がある部屋に見劣りしないデザインが要求される。音はそれなりに美麗・・・・でかつ、それなりにパワフル。 ク リスタルクリーンな音が部屋いっぱいに広がる...... といった要求をそつなくクリーアーしている。(すばらしいデス・・・・・)

商品の成り立ちからお判りと思うが、そうした顧客の要求に応えるために、少量生産で、利ざやが大きい商品として成り立つものである。当然超高額な値付けがなされる。買う側も値段には頓着せず、希少性と高額な値段もまたステータスの一部となる。

ワタクシ的にはこういった特殊な成り立ちの高額商品を、生真面目な日本人が 無批判かつまじめに「お勉強」して、さらに年金やら預貯金を切り崩したり、ローンを組んで、次々と購入するのは 良いお得意さんを通り越して、良いカモ になってるだけなんじゃないか・・・・・・と思ったりもする今日この頃である。

日本の方がもっとイロイロと素晴らしいリソースがあるのに・・・・
ちょっと残念である。

某社(舶来・・・)の百万以上のDVDプレーヤーの中身が、そっくり国産の実売2万円のものだった・・・なんて笑えない話もあるらしい。

日本のメーカーさんもその辺を理解してしっかりマーケッティングしていれば今頃・・・と悔やまれるところである。マーケットの規模からして難しいか・・・・(その辺、アキュとかエソとかTADとかはエライと思う。継続こそチカラである。OEMだがフォスなども凄い・・・)

その辺のカラクリを理解して、過去の日本製品の中から特に優良な品を選別するチカラと、昨今の音の色づけなどの妙を心得れば、ジャンクを修理したガラクタのようなものでも、ウン百万のハイエンドの機器を超える音を出す可能性も生じる訳で・・・・

2008年5月2日金曜日

211シングル




アルティック299の駆動用には、これまで手持ちのLV-117という、ラックスのMOSFETのアンプを使っていた。このアンプはLV-109の出力を押さえた弟分ながら、109の後継機であり、109の幾分こってり系の?音から脱皮し、エネルギー感と透明感が向上している。国内向けよりも、主にヨーロッパに輸出されていたようである。このアンプは気に入っていて、サブとして前から使っていた。

LVシリーズは真空管MOS FETのハイブリッドの方が有名で、LV-117はその陰に隠れ、中古市場での評価は低く、非常に安く入手できる。 無名ながら、アルパインらしい積極性と、ラックスらしい適度な音楽性を兼ね備え、通常のブックシェルフスピーカーの駆動には、いかにもMOSらしい、なかなか良いパフォーマンスを示すアンプである。内臓のDACは今ひとつ(一世を風靡した?バーブラウンのマルチラダー型が懐かしい・・・)だが、パワーアンプ部には東芝の有名なMOS FETを使っており、なかなか良いのである。

CDダイレクト入力を活用すれば、マスターボリューム付きのパワーアンプの様に使えるので、これを299のドライブ用に活用していた。

しかし、超高感度の299に対しては、残留ノイズが目立つのと、音がやや硬質で、伸びやかに鳴らないところにFETの限界を感じていた。


やはり真空管アンプしかないか・・・、ということで、比較的出来の良い6L6GCのプッシュプルアンプを試しに繋いでみた。しかし、これはまったく相性が悪く高域が詰まった感じで全くダメだった。このアンプは6L6GCプッシュプルながら、定評有るサンスイのアウトプットトランスを搭載していて、高域も伸びている。フォステクスのスピーカーシステムに付属の小型のホーンツイーターを鳴らした時には、非常に綺麗な高音を出していたのにも関わらず、299ではまともな高音が出ないのである。その音の落差には正直ビックリした。

強力なホーンドライバーは猛烈に高能率で、アンプの粗がもろに出てしまうようだ。常識が通用しない?シビアな世界らしい。

そこで299用のアンプをぼちぼち物色していたところ、何となく気になったのが、211のシングルアンプだった。



かなり前、秋葉原に三栄無線があったころの想い出だが、デモで845のシングルアンプを鳴らしていたのを聴いたことがある。一聴して、インパクトのある音で、なんとも力強い、歯切れのいい音がフロアー全体に響き渡っていた。

巨大な真空管と大型トランス、立派な筐体、1000Vもの高電圧と、オーディオにこんな世界があるのかと驚かされた。

値段はかなり高く、大規模で、とても手が出せるような代物ではなかったと思う。


845と同系列の211を使ったシングルアンプは、高域に力感があり、コンプレッションドライバーの駆動用として良いらしい・・・・・との噂を聞いた。

最近の中国球の211は比較的高品質で、しかも需要が少ないせいか、(あるいは不人気なせいか?)300Bよりも低価格で入手できる。 問題は1000Vの高圧対応のアンプ本体の製作に相当なコストがかかってしまう点である。

そんなことを考えていたところ、たまたま211シングルの出物があり、性懲りもなく、禁断の領域についつい手を出してしまった。





日本製の高品質な211アンプは非常に高額であるが、中国製品はかなり安く手に入る。買えない物は話にもならないが、一回は211の音を聞いてみたい。日本製の中古品も考えたが、コンデンサー等が傷んでいる場合、自分でメンテするにはかなりの危険が伴うし、プロでも交換整備を引き受けてくれる所は少ないようだ。(感電事故の可能性があるらしく敬遠されるようだ。)
やはり新品か、比較的製作時期の新しい中古品である必要がある。調べるといずれも非常に高価である。そこで、ダメ元で中国製品の新品を買ってみることにした。アンプの仕様だけを見て適当に決定した。



目下、中国製の真空管アンプ本体は評価が真っ二つである。最近は北米、ヨーロッパにも輸出されており、急速に品質は向上していると聞く。良い物に当たれば、価格も極めて安く、満足度は非常に高いらしい。一方、品質が悪いものは、目も当てられない音で(耳か・・)、危険性すらあるらしい。
届いた製品には、一応ブランド名が付いていたので、ネットで検索したが、全く出てこない。香港か、上海のメーカー製品らしいが、中国本土で製造されているのは間違いない。欧米に輸出されているようだが、ブランド名もあってないような、ショップブランドのような製品なのかもしれない。



梱包のダンポール箱にプリントされたブランド名がマジックで消されているなど、なかなか怪しい商品だ。



届いたアンプは、梱包も非常に怪しく、くたびれた段ボールの中には、申し訳程度にエアーパッキングで包んだアンプ本体と真空管が無造作に突っ込んであった。最初はアンプや真空管が損傷しているのではないかとかなり焦った。



説明書は紙切れ一枚で、当然中国語のみの記載であった。クロームメッキ部にはべとべと指紋が付き、クッション材のスチロールの切れ端が多数ソケット部に入り込んでいた。しかも独特の強烈なにおいがする。日本製品ではとても考えられない。



使ってみると、アルミパネルの端が尖っていて指を傷つけそうだったり、ピンジャックも金メッキが黒くくすんでいて、しかもコネクターがすっぽ抜けるほどゆるゆるだった。
真空管もかなりよれており、ソケットピンのくすみや、埃だらけの状況からして、古い倉庫の奥から発掘された、デッドストック品ではないかと思われる。
怪しさ全開である。
正直、最初にスイッチを入れるときは、感電するか、火でも噴くのではないかと、かなり緊張した。が、とりあえず感電、発煙や発火もなく、無事であった。(笑)
さて、値段が値段なので音にはあまり期待していなかったが、一応音らしい音は出て、一安心。
第一印象としては、211らしい、バリッとした高音が出た。これは期待以上。また意外にも低音はかなり力強い。一方、中域から中低域は弱く、引っ込んだ感じである。全体のバランスとしては見事なドンシャリ傾向である。良く聴くと、高域に独特の艶があるのが判る。これはトリタンフィラメントのキャラクターなのだろうか?



ドンシャリに関しては、エージングでどうにかなる範囲か?、と楽観視して、気長に待っている。到着から約3週間ほどになるが、かなり硬質だった高域の響きもだんだんと落ち着いてきた。いずれにせよ、高域専用のアンプだから中域の落ち込みは問題ないが・・・・・。



211はさすがに大きく、迫力がある。トリタンフィラメントが眩しく、眺めているだけでも楽しめる。出力管からの発熱はさすがに強力で、小型ヒーターさながらである。夏場の使用はかなり辛そうだ。
追記、このアンプはトーンコントロールが付いていて、これが音質に多大な影響を与えているらしい。ストレートなアンプにすべく、このプリ部をバイパスする必要があるかもしれない。

追記 フロントパネルのボリューム基板の辺りに謎の部品が付いていた これが原因で特性が歪んでいた(常にラウドネス入り?謎です)この部品を取り外してストレートなボリューム接続に変更したところフラットになってすっきりした。 
(こういう基板を 蛇足というのかもしれません 汗)
 トーンコントロールらしき反対側のセレクタはネガティブフィードバック量を調整するものらしく、高域特性が変化する。プリメインアンプとして、これはこれで使えそうなので残した。
 この改造でようやく高級な211シングルアンプとなった