2020年3月28日土曜日

Sigma SD quattro H 写真趣味の曲がり角を楽しむ傑作機 4  理由はシャープネス

Sigma SD quattro Hは、写真機趣味の曲がり角の今、スマホでは決して味わえない世界を楽しめる傑作機である

その身勝手な理由はズバリ シャープネス番長 だから・・・

SDQHを使って本当に驚くのは、絵の立体感 ぴりっとエッジの立った仕上がりだ。

クワトロの登場時、先代のメリルと比較して当初評判は芳しくなかったが、その後の画像処理の進化により本来の特性がストレートに出力されるようになった。

昔からフォビオンは、ライバルであるローパスフィルタ付きのベイヤー機と比較し、エッジの立ったシャープな絵が特徴であった。昨今ベイヤー機はローパスレスとなり、シャープネスは著しく向上している。それでも未だにフォビオンは立体感 シャープさにおいて、ベイヤー機とひと味違う明らかな優位性を保っている。

フォビオンの絵を大きく拡大すると、エッジにシャープネスがしっかりかけられていることがわかる。このシャープネスが強い割には見た目が自然であるところがフォビオンの大きな特徴である。

ベイヤー機の場合、フォビオンと同程度の強いシャープネスをかけると、どことなく不自然な汚い感じの絵になってしまうことが良くある。その場合、拡大して見ると、エッジ部分の明暗の縁取りが、幅広くなり、不規則に広がっていることに気がつく。

一方、フォビオンはシャープネスが幅狭くエッジ部に限定してかかっており、まるで髪の毛のような均一の縁取りなので、立体感の高さと自然さが両立している。

この違いは僅かな差で、圧縮された絵や、ぼんやりした映像では差はわかりにくいのであるが、それなりの大きさに絵を拡大表示する場合には、はっきりとした差が出て、作品全体への大きな印象の差となる。

ずいぶん昔、フォビオンに近い絵を撮影していたことを思い出した。デジタルカメラ黎明期に、モノクロ専用デジタルカメラで撮影した映像である。昔はCCDの画素数が限られていたため、解像度の要求されるカラー撮影は苦労した。ベイヤー方式のカラーCCDで撮影した映像は画素数が減ってしまうため、満足な結果が得られず、カラー撮影の際にあえて白黒(グレースケール)のCCDを用い、RGB各色のフィルタをレンズに取り付けて3枚の画像を撮影し、それを一枚のカラー映像に合成する、スリーショットをしていた。
 この頃の、全画素RGBの映像にコントラスト強調をかけた画像がフォビオンの絵と良く似ているのである。

 一方、同ー画素数のベイヤー方式のカラーCCDで撮影した映像の場合、強いシャープネスをかけると、偽色が増え、エッジが不自然となって絵が崩れ、往生することがあった。 ベイヤー方式と組み合わせるローパスフィルタは、モアレ除去のためだけではなく、光線を適度な範囲に拡散させることによって、偽色やエッジの不自然さを出にくくする手段でもある。

 ベイヤー方式はモザイク状に欠けた各色の情報を画像補完のアルゴリズムで埋める作業を行っている(もともと情報の存在しないピクセルを周囲の画像からの演算で無理矢理埋める=人工的に作っている)であるため、そこさらにシャープネスという別の空間フィルタをかけた際に 補完によるエラーが強調されてしまい、予期せぬ結果が出やすいのではないか。

これに対し、フォビオンは垂直分離方式なので、欠損画素を補完する演算が不要であり、3ショット方式と同様に各画素に各RGBの正確な情報を得ることができる。この正しい画像情報に対してコントラスト強調のフィルタ処理を行うため、自然でありながらピリッとシャープな絵をストレートに出力可能と考えられる。

すなわちフォビオンは往年のモノクロカメラRGB3枚合成(スリーショット)と同様の画像をワンショットで撮影できる、唯一無二のカメラと言えるかもしれない。

フォビオンは垂直分離方式という、カラー画像素子の本質的な課題に対する、もっともシンプルかつストレートな解決策によって、自然でシャープな絵の出力が可能という特徴を発揮する。
 こうしたフォビオンの持つ魅力を、ナチュラルな色合いと十分な解像度で楽しめるのがSDQHの特徴であり、フルサイズフォビオンの販売延期となった今、今後暫くの間、大変貴重なツールと言えるのではないだろうか。







2020年3月13日金曜日

Sigma SD quattro H は 写真趣味(カメラ)の曲がり角を楽しむ傑作機 3 その身勝手な理由

Sigma SD quattro H SDQHはミラーレスでありながらSAマウントの長いフランジバッグを有しております。
シグマレンズしか使えないとか、高感度ではボロボロになるなど 写真(機)趣味用機材として若干不遇な?立ち位置ではありますが、工夫と納得で美味しく楽しめる、隠れた名機です。

 他のミラーレス機のように、ライカ等のオールドレンズ遊びができない点に関しては残念ではありますが、フルサイズミラーレス機のα7シリーズが容易に手に入り、2台持ち当たり前の時代ですからさほど問題なさそうです。
 そもそもフォビオンはテレセントリックなレンズでないと強烈な色被り(緑色や紫のフィルタ 偽色が画面の周辺に強烈に出る)を起こす特性があるため、ショートフランジバックのオールドレンズとの相性は良くありません。その結果フランジバックの長い一眼用のオールドレンズで遊ぶことになります。

 SAマウント用のプラクチカ スクリューマウント用の中華製レンズアダプタが1~2千円で入手できるので、結果としてSAマウントボディーでもオールドレンズ遊びはそこそこ楽しめるという話になります。


 また、SAマウントは機械的にペンタックスのKマウントと互換(?)の設計なので選択肢は豊富です。Kマウントレンズを使う場合は基本的に(簡単な)改造が必要です。 細かい話になりますが ペンタックスのKマウントレンズの絞り連動ピンを曲げるかカットして 連動ピンのガードを外す改造が必要です (慣れれば3分程度の作業です)
それだけでシグマのボディーに取り付きます。
 フランジバックはSAマウントの方が少し短いので距離の指標・無限遠の位置は合いませんが、大抵のレンズはピントが来ます。

ペンタックスのレンズ群は昔からコーティングが良いので、抜けが良く、フォビオンとの相性は割と良いです。

 最近若干立ち位置が微妙になってきた ペンタックスのレンズを 純正以外のボディーで楽しむ候補として SDQHは結構アリ な選択肢です。

 オールドレンズの絞りを開けてふわり と撮るには味わい深い タクマーを
 やや大柄なSDQHを散歩カメラとして使うには 小型軽量で抜けの良いSMCコートのmレンズを使い分けできます。シグマSAマウントの良いレンズは描写は抜群でも大きく重いですから徐々に稼働率が下がりますのでその対策にはもってこいです。
 どちらのオールドレンズもフルサイズのミラーレスで使うと周辺部は流れ不満もありますがSDQHはAPS-Hサイズなので良い感じに周辺はトリミングされますので、中央部の美味しいところだけ使う形になります。F5.6以上に絞ったときの先鋭度は画面全域で高く、仕上がりに不満を感じることはほとんどありません。

(シグマSAマウントレンズはペンタックスのボディーには取り付きません。微妙にレンズ側マウントのガイド径を変えていて(少し大きくなっている)入らない構造にしているようです。涙目)


 SAマウントのフランジバックはキャノンEFマウントと同じで、しかも電子制御プロトコルも類似なため、海外ユーザーの強者はキャノンEFレンズマウントに改造したSDQHでレンズのラインナップを増やし、フォビオンを楽しんでいるようです。気合を入れて改造すれば 絞り・AFは連動するらしいです(手振れ防止はNGらしいですが)。


2020年3月12日木曜日

sigma SD quattro H は 写真趣味(カメラ)の曲がり角を楽しむ傑作機 2 その身勝手な理由

sigma SD quattro H SDQHは、スマートフォンに追い込まれてきた写真(機)趣味の曲がり角を楽しむ通向きのツールである。

フルサイズフォビオンのリリース時期の延期の話が出ていますが、素子の基本設計は完了しており生産過程の技術的な障害との説明がなされています。 半導体製造はトップダウン式の開発で設計初期段階の誤りや製造過程の僅かな手違いで致命的な結果となる場合も少なくなく、慎重に計画的に進める必要のある、大きなプロジェクトです。

シグマのような、レンズ専業メーカーが独自の撮像素子を生産するというのは並大抵のことではなく、シグマのフォビオンにかける決意が読み取れます。実際に SDQHを使ってみると 素性の良さ 欠点もあるけれども それを上回る強力な魅力がある ということは実感でき、色再現性の良さとともに 作品作りにその個性を発揮してくれます。

フルサイズのフォビオン機は順調にいって2021年、遅れると2022だそうですが、このようなコメントが出ると言うことは、22ぐらいに出るという理解かと勝手に解釈。

スペックは既に明らかになっていて
3層構造1:1:1 のFoveon X3のメリル式
5,520✕3,680✕3層=60,940,800画素(6,094万画素)
実イメージサイズは20,313,600画素(2,031万画素)でフルサイズ

SDQHは
有効画素:約38.6MP
T:6,200×4,152 / M:3,100×2,076 / B:3,100×2,076
総画素:約44.7MP
M B層はTの輝度情報を元に算出しているようです

この2つの素子のスペックにフォビオン設計の苦労が読み取れます。

メリル方式に純粋に3層同じ画素数で設計すると、トップ層から奥に位置するミドルやボトム層は光量が不足し採光面積を増やして対処する必要があります。フルサイズに拡張しても画素数を大幅に増やすことは難しく、20.3MP程度が妥当ということなのでしょうか。

クワトロ式では光量豊富なトップ層で輝度情報・解像度を稼ぎ 色情報はM B層で解像度を1/4に落として取得することで感度不足に対処したのでしょう。

当初クワトロ式はノイズ感が半端無く、また補完による解像度に不満の声が上がり
、特にメリルの純粋な3色 色情報豊富かつ解像度の高い絵に慣れたフォビオンのベテランユーザーから酷評されてしまいました。

しかしクワトロ式はその後のアルゴリズム改良等でフィルムに近い粒状感まで改善されていますし、我々の眼は輝度情報には敏感でも色情報には割と鈍感であるという特性から、(虫眼鏡ツールで強拡大してピクセル解像度を確認しないと気が済まない潔癖な方でなければ)見た目シャープにきりっと解像しているように見えるという、割と賢い設計をしているというメリットに気がつきます。

 次のフォビオンはメリル方式+フルサイズという純潔の理想のスペックですが、撮像素子の大型化による生産時の歩留まりの悪化等によるコストアップは若干心配になりますし、そもそもフォビオンセンサはテレセントリック性をシビアに求める特性(平行光線入射でないと色かぶりなどを起こす)がありますから、フルサイズ化はレンズを含めた最適化も結構大変で、レンズを選ぶセンサになる気もします。

 既に裏面照射式CMOSが60MPの時代に入り、低画素機も24MPで抜群のDレンジと色再現性を叩きだしていることを考えると、これから2年後に20MPでどこまでユーザーに訴求できるのか少々不安な気も致します。

一方、SAマウントは終了してしまうものの、SDQHはAPS Hサイズでトップ層25.7Mの純解像度をもっていますし、補完を使ったS-HI 8,768×5,840のJPEGでもフォビオンの良さを充分に発揮する(等倍拡大しなければ)ので、SAマウントで気に入ったレンズがあれば、末永くその魅力的な絵を楽しむことができる隠れた名機なのです。


2020年3月8日日曜日

sigma SD quattro H は 中判デジタルバックのマイクロ版である SDQH 写真趣味(カメラ)の曲がり角を楽しむ傑作機

sigma SD quattro H
という4年ぐらい前に出たカメラがあります

フォビオンはなんとなく気になっていて
フルサイズのフォビオンが出るとか出ないとか(延期になったらしい)出たら欲しいと思っていたのですが、よくよく調べると現行のSD quattro Hは充分に良いという噂なので
値段も下がってきているし思い切って購入してみました。

大正解でした。
普段はソニーのα7RIIを使っているのですが
光量の豊富な条件ではSD quattro Hが大活躍しています。

とても個性的で魅力あるカメラです。総合的な表現力で、ソニーのフルサイズ機を上回っているように感じられます。

SD quattroは賛否両論、いろいろと批判の多い機種ですが
登場時の不具合はほとんど解消されていて
最新のファームウエアであれば特に問題なく撮影ができます。(動体撮影は無理ですが)

SD quattro Hはおそらくスタジオ(物撮り)や風景撮影などの中判デジタルバックを念頭に開発されたのではないか と思われます。(テザー撮影用のソフトもありますし。)

ここのところ、フルサイズ機の進化、ローパスレス、裏面照射CMOS ローノイズ化技術 デジタル信号処理の進歩めざましく、フォビオンも中判デジタル同様に画質の優位性は後退しています。単純な解像度比較などのスペック云々は登場時の4年前と比べてSD quattro Hに明らかな優位性があるわけではありません。 

中判デジタルはその独特の表現力の高さから現在も作品用として使用されるプロやハイアマチュアがおられますが、SD quattro Hのフォビオンもそれに近い何か独特な表現力、撮像素子自体の持つ、割と素直な個性があるのです。

センサは小さく、低感度ながら、中判デジタルバックの大型素子に相当する表現力と素性の良さを持っているようです。

喩えは難しいのですが、通常のミラーレスではなく、中判デジタル相当の能力を コンパクトなAPS素子に纏めた「物撮り機」と考えれば、いろいろと納得がいきます。



EVFなどの取り回しはデジタル黎明期のデジカメぐらいのおっとりしたレスポンスですが、動体でなければそれほど困ることはありません。
AFもほどほどの動作で、精度はしっかりしているようです。(最新ファーム)

レンズに関してはマウントアダプタを介してスクリューマウントのオールドレンズが使える外、ペンタックスのK、M、Aレンズの絞り連動ピンを外したものが使えます。

 ペンタックスの隠れ銘レンズ、例えばマクロ50mmF2.8  M35mm F2など軽量で描写力もあり、コンパクトなミラーレスカメラとして充分楽しめます。(特にM35mm F2はお勧め。 43~45mm相当の画角になります)

シグマ純正レンズに関しては、18−35mmF1.8がベストマッチです。APSーC用のレンズですが、このズームレンズは全てのエレメントが大きく、イメージサークルが広いのでAPS-Hで使えます(18mmのエッジにトリミングが必要な時もあるがほとんどそのまま使える)
35mm換算で24-45mm1.8という、まさに常用域をカバーするレンズとして使えます。

18−35mmF1.8は光学性能が非常に高く、海外ではプロの映像作家がこぞって使用しているという銘レンズです。(主に動画 縮小光学系との併用でblack magicやGH4 5で)

この高性能レンズとSD quattro Hの組み合わせは強烈で、通常のフルサイズ機と違う何かがある感じ

仕上がりは 往年のデジタル中判・大判フィルムカメラに近いものです。

中判・大判システムをスタッフ数名で運用していた時代を考えると、手ぶれにさえ注意すれば一人で歩き回って自由に撮影できますから、隔世の感があります。

中判、大判との差は、フォビオンセンサの特性により、シャドー領域に余裕がないため 暗部の仕上がりを考えて露出補正をきめ細かく行うこと がポイントになりそうです。

三脚が使える状況では、SFDモードで押さえの一枚も撮っておいた方が良いようです。

SDQはデビュー当初、フォビオンの内部処理の未完成によると思われる、増感したフィルムのような、ざらざらした粒状感が気になりましたが、その後の熟成により、まるで微粒子フィルムを使ったフィルム作品のような、視覚的に好ましい粒状感、エッジコントラスト、トーンに仕上がっています。

フォビオンは無機質なもの いわゆる「フォビオン物件」(笑)に向いているとされていますが、立ち上がってくるような立体感のある仕上がりに、改良で表現力・自然さが増している分、無機質なもの以外の、さまざまな被写体に応用できそうです。

以前、メリルの導入を考えた時、色の不安定さ、特に緑かぶり傾向が顕著で、暗部の余裕がなく断念しましたが、最新ファームのSD quattro Hにはそのようなことはなく、自然な色表現となっています。それに加えて(以前と比べてマイルドになったと言われるものの)独特の表現力は今も健在のようです。

ありがたいことに、フォビオンはかってのようなRAW現像必須な製品ではなく、ISO100の設定であればjpegをそのまま使えます。
(SPPの動作は 割とまったりしておりますので・・・ せっかちな私はできれば使用を避けたい 汗)

SD quattro Hはフィルムライクなフォビオンの表現力を気楽に楽しめる、隠れた名機であることを確信しました。

特にモノクロ撮影では唸るような仕上がりが得られます。

SD quattro Hが海外で好評な理由がよく分かりました。