2007年12月4日火曜日

Hytron VT-52へ

Western Electricの誉れ高い300Bであるが、最近高騰の一途を辿っている。再生産前のモノは未使用ペアが20万を超える場合もあるらしい。Western Electricのオリジナルは素晴らしい音がするのだそうであるが、中国球も良くなっているとの意見もあり、真空管は値段と音が相関しているというよりもむしろ、希少性が値段に大きく影響するようだ。 まだ好みもハッキリと決まっていない段階で、むやみに特定の真空管に大金をつぎ込もうとは思わない。

中国球の300Bの印象であるが、シングル8ワットながら、中低域の厚みと力強さにまず驚かされる。さらに3極管特有の澄んだ高域も非常に好ましい。女性のジャズボーカルモノは何とも言えない趣がある。多くの人が惹きつけられるのも良く判る。

ところが、よくよく聞き込んでみると、雰囲気たっぷりの余韻が時として過剰な印象を与え、むしろ臨場感や実在感を削いでしまうことが判ってくる。また音場も、3次元的に広いのだが、全体にうっすらと靄がかかったような感じで、やや狭いような印象を与える。

最も困ったのは、ある程度のパワーを入れないと、上記の良さが充分に出てこないところである。たった8ワットの出力なのだが、パワー不足を感じるどころか、10畳前後の部屋で90db程度のスピーカーを使用する場合では、パワーをもてあまし気味なのである。中、大ホール向きと言われる所以が判った気がする。ベテランの方によると、300Bは難しい玉で、本当の力を引き出すには、黄金期の大英帝国製やら最低でもUTCのUL級のトランスなど、厳選されたパーツを使用して、真剣に回路設計に取り組む必要があるらしい。私はそこまで真空管式に拘るつもりはないので、300Bはジャズボーカル用と割り切り、他の方法を考えることにした。

もう少し締まった、そして実在感のある音を求めて、軍用球のVT-52をテストしてみることにした。super45と言われる3極管である。幸いハイトロンの未使用品が比較的手頃な値段で入手できることが判った。

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