2008年5月2日金曜日

211シングル




アルティック299の駆動用には、これまで手持ちのLV-117という、ラックスのMOSFETのアンプを使っていた。このアンプはLV-109の出力を押さえた弟分ながら、109の後継機であり、109の幾分こってり系の?音から脱皮し、エネルギー感と透明感が向上している。国内向けよりも、主にヨーロッパに輸出されていたようである。このアンプは気に入っていて、サブとして前から使っていた。

LVシリーズは真空管MOS FETのハイブリッドの方が有名で、LV-117はその陰に隠れ、中古市場での評価は低く、非常に安く入手できる。 無名ながら、アルパインらしい積極性と、ラックスらしい適度な音楽性を兼ね備え、通常のブックシェルフスピーカーの駆動には、いかにもMOSらしい、なかなか良いパフォーマンスを示すアンプである。内臓のDACは今ひとつ(一世を風靡した?バーブラウンのマルチラダー型が懐かしい・・・)だが、パワーアンプ部には東芝の有名なMOS FETを使っており、なかなか良いのである。

CDダイレクト入力を活用すれば、マスターボリューム付きのパワーアンプの様に使えるので、これを299のドライブ用に活用していた。

しかし、超高感度の299に対しては、残留ノイズが目立つのと、音がやや硬質で、伸びやかに鳴らないところにFETの限界を感じていた。


やはり真空管アンプしかないか・・・、ということで、比較的出来の良い6L6GCのプッシュプルアンプを試しに繋いでみた。しかし、これはまったく相性が悪く高域が詰まった感じで全くダメだった。このアンプは6L6GCプッシュプルながら、定評有るサンスイのアウトプットトランスを搭載していて、高域も伸びている。フォステクスのスピーカーシステムに付属の小型のホーンツイーターを鳴らした時には、非常に綺麗な高音を出していたのにも関わらず、299ではまともな高音が出ないのである。その音の落差には正直ビックリした。

強力なホーンドライバーは猛烈に高能率で、アンプの粗がもろに出てしまうようだ。常識が通用しない?シビアな世界らしい。

そこで299用のアンプをぼちぼち物色していたところ、何となく気になったのが、211のシングルアンプだった。



かなり前、秋葉原に三栄無線があったころの想い出だが、デモで845のシングルアンプを鳴らしていたのを聴いたことがある。一聴して、インパクトのある音で、なんとも力強い、歯切れのいい音がフロアー全体に響き渡っていた。

巨大な真空管と大型トランス、立派な筐体、1000Vもの高電圧と、オーディオにこんな世界があるのかと驚かされた。

値段はかなり高く、大規模で、とても手が出せるような代物ではなかったと思う。


845と同系列の211を使ったシングルアンプは、高域に力感があり、コンプレッションドライバーの駆動用として良いらしい・・・・・との噂を聞いた。

最近の中国球の211は比較的高品質で、しかも需要が少ないせいか、(あるいは不人気なせいか?)300Bよりも低価格で入手できる。 問題は1000Vの高圧対応のアンプ本体の製作に相当なコストがかかってしまう点である。

そんなことを考えていたところ、たまたま211シングルの出物があり、性懲りもなく、禁断の領域についつい手を出してしまった。





日本製の高品質な211アンプは非常に高額であるが、中国製品はかなり安く手に入る。買えない物は話にもならないが、一回は211の音を聞いてみたい。日本製の中古品も考えたが、コンデンサー等が傷んでいる場合、自分でメンテするにはかなりの危険が伴うし、プロでも交換整備を引き受けてくれる所は少ないようだ。(感電事故の可能性があるらしく敬遠されるようだ。)
やはり新品か、比較的製作時期の新しい中古品である必要がある。調べるといずれも非常に高価である。そこで、ダメ元で中国製品の新品を買ってみることにした。アンプの仕様だけを見て適当に決定した。



目下、中国製の真空管アンプ本体は評価が真っ二つである。最近は北米、ヨーロッパにも輸出されており、急速に品質は向上していると聞く。良い物に当たれば、価格も極めて安く、満足度は非常に高いらしい。一方、品質が悪いものは、目も当てられない音で(耳か・・)、危険性すらあるらしい。
届いた製品には、一応ブランド名が付いていたので、ネットで検索したが、全く出てこない。香港か、上海のメーカー製品らしいが、中国本土で製造されているのは間違いない。欧米に輸出されているようだが、ブランド名もあってないような、ショップブランドのような製品なのかもしれない。



梱包のダンポール箱にプリントされたブランド名がマジックで消されているなど、なかなか怪しい商品だ。



届いたアンプは、梱包も非常に怪しく、くたびれた段ボールの中には、申し訳程度にエアーパッキングで包んだアンプ本体と真空管が無造作に突っ込んであった。最初はアンプや真空管が損傷しているのではないかとかなり焦った。



説明書は紙切れ一枚で、当然中国語のみの記載であった。クロームメッキ部にはべとべと指紋が付き、クッション材のスチロールの切れ端が多数ソケット部に入り込んでいた。しかも独特の強烈なにおいがする。日本製品ではとても考えられない。



使ってみると、アルミパネルの端が尖っていて指を傷つけそうだったり、ピンジャックも金メッキが黒くくすんでいて、しかもコネクターがすっぽ抜けるほどゆるゆるだった。
真空管もかなりよれており、ソケットピンのくすみや、埃だらけの状況からして、古い倉庫の奥から発掘された、デッドストック品ではないかと思われる。
怪しさ全開である。
正直、最初にスイッチを入れるときは、感電するか、火でも噴くのではないかと、かなり緊張した。が、とりあえず感電、発煙や発火もなく、無事であった。(笑)
さて、値段が値段なので音にはあまり期待していなかったが、一応音らしい音は出て、一安心。
第一印象としては、211らしい、バリッとした高音が出た。これは期待以上。また意外にも低音はかなり力強い。一方、中域から中低域は弱く、引っ込んだ感じである。全体のバランスとしては見事なドンシャリ傾向である。良く聴くと、高域に独特の艶があるのが判る。これはトリタンフィラメントのキャラクターなのだろうか?



ドンシャリに関しては、エージングでどうにかなる範囲か?、と楽観視して、気長に待っている。到着から約3週間ほどになるが、かなり硬質だった高域の響きもだんだんと落ち着いてきた。いずれにせよ、高域専用のアンプだから中域の落ち込みは問題ないが・・・・・。



211はさすがに大きく、迫力がある。トリタンフィラメントが眩しく、眺めているだけでも楽しめる。出力管からの発熱はさすがに強力で、小型ヒーターさながらである。夏場の使用はかなり辛そうだ。
追記、このアンプはトーンコントロールが付いていて、これが音質に多大な影響を与えているらしい。ストレートなアンプにすべく、このプリ部をバイパスする必要があるかもしれない。

追記 フロントパネルのボリューム基板の辺りに謎の部品が付いていた これが原因で特性が歪んでいた(常にラウドネス入り?謎です)この部品を取り外してストレートなボリューム接続に変更したところフラットになってすっきりした。 
(こういう基板を 蛇足というのかもしれません 汗)
 トーンコントロールらしき反対側のセレクタはネガティブフィードバック量を調整するものらしく、高域特性が変化する。プリメインアンプとして、これはこれで使えそうなので残した。
 この改造でようやく高級な211シングルアンプとなった

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