QUAD ESL 63 Pro
フィリップスのレコーディングモニターとして活躍していたことで有名なエレクトロスタティックスピーカー
劣化が進んでいる個体が多いので、修理は大変だが、その価値のあるスピーカーである。
コンデンサー式のフルレンジでこれだけのまとまりのある音を出すのは凄い
電極形状とディレー回路により、球面波を発するように、巧妙な設計がなされている。
この63proは、プロ用の設計のためハンドル、ラバーのリング、サランネットなどで真っ黒な外装
いかにもプロツールらしい、かなりスパルタンな印象のスピーカーである。
モダンアートのような、不思議な緊張感のあるデザイン。
音はアンプ次第である。
球面波の形成のためにディレー回路が入っており、その回路による影響か
ESL57と比較すると、ダイレクト感と厚みに関して、やや後退しているように感じられる。
フラットレスポンスで聴感上の違和感は少ないものの、 下手をするとやや繊細で薄い音になりがちである。
従ってダイナミックな音と厚みを要求する場合には、アンプに相当な力がないと駆動しきれない印象がある。
MOS FETのB2102 MOS や管球の三極管シングルでは、実力を発揮させることは難しかった
(美しい音で、いかにもコンデンサーらしい、透明で、BGM的なソフトな音になる それはそれで良いのではあるが・・・やはり長期使用ではだんだんと欲求不満が出てくるのである 涙)
いろいろ試した結果、AMCRON MacroTech 600で好結果を得ている。
(コンデンサースピーカー専用のアンプというものも存在するそうであるが、とにかく通常のアンプでは引き締まったソリッドな低音や、彫りの深い立体音像の再生は厳しいと思われる。)
この63はかなり繊細な音が出るので、弦楽器はすばらしい
アンプとセッティングを一生懸命頑張ると、ピアノの再生もまた凄い。
背面に充分なスペースを空けることが大切で、やや近接して試聴すると音圧が上がって迫力が出てくる。
やや淡泊な音像ではあるものの、響板やフレームの感じもハッキリ出せる。
この辺のレンジの広さは、ESL57と比較して格段の進歩である。
ボーカルはニュートラルで、ちょっと聴いただけではごく普通の音であるが
音量を上げ気味にして、あるいはギリギリに絞って聴いているときに、時々本物の人の声が聞こえた感じがして、思わずギョッとすることがある。
トランジェントと雰囲気描写が抜群に良く、チューニング次第で、クリスタルクリアーな美麗な音も、厚みのあるしっとりした音も再生することが可能である。
全体にきわめてニュートラルな、ごく自然なナマに近い音である。
中小音量の再生では、リファレンスたりえる充分な資格があり、フィリップスが長年モニターとして採用した理由も頷ける。
現行製品の最新型は、フレームが強化され、ステーが追加されるなどデザインも一新され、音のエッジがやや明確になった印象がある。
これは音像や低音の明確さとして現れている。
全体にニュートラルな、現代的な方向のサウンドに変化している。
ただ、エレクトロスタティックの発声ユニット等の基本部分はそのまま踏襲していることから、音の差は意外に少ない。
整備をしっかりすれば、このQUAD ESL 63 Proも、まだまだ充分現役である。
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