2020年3月12日木曜日

sigma SD quattro H は 写真趣味(カメラ)の曲がり角を楽しむ傑作機 2 その身勝手な理由

sigma SD quattro H SDQHは、スマートフォンに追い込まれてきた写真(機)趣味の曲がり角を楽しむ通向きのツールである。

フルサイズフォビオンのリリース時期の延期の話が出ていますが、素子の基本設計は完了しており生産過程の技術的な障害との説明がなされています。 半導体製造はトップダウン式の開発で設計初期段階の誤りや製造過程の僅かな手違いで致命的な結果となる場合も少なくなく、慎重に計画的に進める必要のある、大きなプロジェクトです。

シグマのような、レンズ専業メーカーが独自の撮像素子を生産するというのは並大抵のことではなく、シグマのフォビオンにかける決意が読み取れます。実際に SDQHを使ってみると 素性の良さ 欠点もあるけれども それを上回る強力な魅力がある ということは実感でき、色再現性の良さとともに 作品作りにその個性を発揮してくれます。

フルサイズのフォビオン機は順調にいって2021年、遅れると2022だそうですが、このようなコメントが出ると言うことは、22ぐらいに出るという理解かと勝手に解釈。

スペックは既に明らかになっていて
3層構造1:1:1 のFoveon X3のメリル式
5,520✕3,680✕3層=60,940,800画素(6,094万画素)
実イメージサイズは20,313,600画素(2,031万画素)でフルサイズ

SDQHは
有効画素:約38.6MP
T:6,200×4,152 / M:3,100×2,076 / B:3,100×2,076
総画素:約44.7MP
M B層はTの輝度情報を元に算出しているようです

この2つの素子のスペックにフォビオン設計の苦労が読み取れます。

メリル方式に純粋に3層同じ画素数で設計すると、トップ層から奥に位置するミドルやボトム層は光量が不足し採光面積を増やして対処する必要があります。フルサイズに拡張しても画素数を大幅に増やすことは難しく、20.3MP程度が妥当ということなのでしょうか。

クワトロ式では光量豊富なトップ層で輝度情報・解像度を稼ぎ 色情報はM B層で解像度を1/4に落として取得することで感度不足に対処したのでしょう。

当初クワトロ式はノイズ感が半端無く、また補完による解像度に不満の声が上がり
、特にメリルの純粋な3色 色情報豊富かつ解像度の高い絵に慣れたフォビオンのベテランユーザーから酷評されてしまいました。

しかしクワトロ式はその後のアルゴリズム改良等でフィルムに近い粒状感まで改善されていますし、我々の眼は輝度情報には敏感でも色情報には割と鈍感であるという特性から、(虫眼鏡ツールで強拡大してピクセル解像度を確認しないと気が済まない潔癖な方でなければ)見た目シャープにきりっと解像しているように見えるという、割と賢い設計をしているというメリットに気がつきます。

 次のフォビオンはメリル方式+フルサイズという純潔の理想のスペックですが、撮像素子の大型化による生産時の歩留まりの悪化等によるコストアップは若干心配になりますし、そもそもフォビオンセンサはテレセントリック性をシビアに求める特性(平行光線入射でないと色かぶりなどを起こす)がありますから、フルサイズ化はレンズを含めた最適化も結構大変で、レンズを選ぶセンサになる気もします。

 既に裏面照射式CMOSが60MPの時代に入り、低画素機も24MPで抜群のDレンジと色再現性を叩きだしていることを考えると、これから2年後に20MPでどこまでユーザーに訴求できるのか少々不安な気も致します。

一方、SAマウントは終了してしまうものの、SDQHはAPS Hサイズでトップ層25.7Mの純解像度をもっていますし、補完を使ったS-HI 8,768×5,840のJPEGでもフォビオンの良さを充分に発揮する(等倍拡大しなければ)ので、SAマウントで気に入ったレンズがあれば、末永くその魅力的な絵を楽しむことができる隠れた名機なのです。


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