2017年11月26日日曜日

真空管の話

 昨今のオーディオはデジタルアンプ(高性能でクリーンないい音)と小型スピーカー(小口径低歪みユニットと曲線エンクロージャーでスマートな音)とイヤフォン(驚くほど広帯域、高分解能)の時代に入っております。

 都心のマンション住まいには場所も取らず、家族の同意も得られやすく(爆)、大画面液晶ディスプレイと両立する、まさにジャストフィットな構成であります。

 ハイレゾ音源の高音質録音ソースを再生すると、各音源が整然と並んで立体的なステージを構成して、そのスムーズな音空間に満足であります。まさにハイレゾハイファイの悦楽であります。

 ところが それだけ だとなんとなく飽きてくるのです。ライブでの熱狂、身体に響くライブ感のような躍動感はボリュームを上げてもなんとなく足りない。イヤフォンで大音量で再生した方がライブに近い躍動感を得られます。ところが同じ音源の再生であっても、小型スピーカーからの再生では迫力や没入感は今ひとつだったりします。

 さらに、ライブで聴く肉声のボーカルのすばらしさ(ボーカリストの体調が良くて、ホールが極上であった時に聴かれる生の美声)やアコースティックな楽器の何とも言えない余韻、響きを聴くと 我が家のオーディオシステムはやや音が乾いているのかな?と思うことも・・・

 そうしたギャップを埋めるために(?)こだわりのある層はいろいろとオーディオ機器に手を出して行くわけでありますが、昨今の傾向として興味深いのは真空管(管球)アンプと高能率スピーカー熱であります。どちらもかなりニッチではありますが、元気があります。(さらにアナログレコードも人気)

 真空管アンプは、低出力・大歪み・大発熱・狭帯域(涙目)と、最近のデジタルアンプの真逆を行っているのでありますが、なぜか音がいい といいますか、音の悪い管球アンプはとっくの昔に淘汰されておりまして、きちんとしたメーカー、ビルダーのアンプで聴くとデジタルアンプに無い何か(ものの哀れか余韻か歪みか)が感じ取れるのです。

 例えとして良いかは判りませんが、デジタルアンプの初期値は醸造用アルコールやリキュールで 真空管アンプは生酒のような違いがあります。

 デジタルアンプの基はオペアンプとパワー素子の組み合わせなので、各構成素子をシンプルに組み合わせて素の音を聞くと超ハイファイで濁りのない無味な世界です。高い帯域に優れた性能を発揮する一方、どうしても分析的でクールな音になりがちです。また、単一の増幅素子の特性としては、それほど良好ではなく、ネガティブフィードバックをかけるのが基本で、それによって低歪みにして、比較的大規模な回路を構成しています。複雑な構成になるため、設計が甘いと(高周波特性が良すぎるのか、スイッチングの際のパルスがどこかで悪影響するのか)何とも言えない違和感のある歪みや付帯音が混入してしまいます。(電源やケーブルやアースや微振動などに弱い気がします)
 高級デジタルアンプ(特にハイエンド)はこれに様々なチューニングを施して芳醇な音世界(高級白ワイン?)を実現しています。メリットとしては大電流出力が可能なので昨今の低感度かつ凝ったネットワークの入ったSPの駆動には長けています。

 一方真空管は素子の特性にある程度の帯域しかなく、特に高周波特性は芳しくないのですが、可聴帯域は十分確保しております。高電圧で電子ビームを電極にぶつけるという何とも大らかな増幅を行っているので、半導体と比べて素子単独の特性はむしろ良好で、あまり大きな手を加えなく(ネガティブフィードバックなしでも)ても使えるという素性の良さがあります。素子自体が大きく、高周波は減衰または帯域外なので、防振、電源やアース線の引き回しに過剰な気遣いは必要ないというメリットがあります。

 さらに真空管アンプは酒に例えると濁り酒から淡麗大吟醸まで、多種多様性があり、海外製の球まで含めるとワインのような、クラフトビールのようなバラエティーがあり、楽しめます(もちろんあまり美味しくないものも時々ありますが・・・)

低出力、雑多、多様性といったものを 許容できれば、真空管アンプは自分にぴったりの音を探すことができるので、趣味としてはかなりのものであります。

 現在、真空管はギターアンプ用に製造されているものと、一部のオーディオ用に製造されているものを除くと絶滅危惧であり、在庫の球はじわじわ減っています。ただ時に人気な球は復刻さえることもありますので、球が完全になくなることはなさそうです。

 球の差し替えだけでも音の変化が楽しめます(球転がし)。この音の変化は、デジタルアンプの素子の差し替えよりも格段に楽しい世界です。

 特におすすめは、3極管で、構成がシンプルなので良い音がします。2A3も300Bも良いですが、300A(ほぼ絶滅種)に近いと言われる、VT52は一度は聴いた方が良いと思います。最近はVT52アンプが製造されていますので、敷居はだいぶ低くなりました。出力は少なめですが、300Bよりも音は良いと言うのが多くのベテランの意見です。私も(ブログには書いていないです)それなりに球アンプを遍歴しましたが、VT52に至り満足し、これ以上の探求は不要と感じ、聴感上もっとも重要な中域ドライバー用のアンプとして不動の地位を占めております。

 真空管アンプは低出力なので、組み合わせるスピーカーには能率などへの配慮が必要です。






2017年10月21日土曜日

Crescent コルトレーン オリジナル曲が染みる

A slanted photograph of Coltrane playing saxophone in a blue suit facing the left. The top left corner of the cover features the title of the album in red script with by the words "John Coltrane Quartet" in yellow beneath it and "Featuring McCoy Tyner/Jimmy Garrison/Elvin Jones" underneath that in blue.

インパルス時代の名盤で
ものすごくバランスの良いアルバム

さりげなくBGMとして聴いてもよし
トレーンのシーツに真剣に向き合ってもよし
録音も良好
このアルバム
Soultrane
Afroblue Impressions(Live) 辺りが
いいですね

2017年10月18日水曜日

Nikon1 不遇?の名機V1 J3 J5・・・ 今も愛用してます  Nikon1の存続と V5に期待しています。

Nikon 1という 通好みのミラーレス一眼があります。 

相当な紆余曲折の中でJ5 V3まで 良く健闘したと思うのですが・・・・・ 女子受けと男子受けの二股を狙った戦略?がマイナスとなり、総合的には販売で若干苦戦されたのかもしれません。

今年は創立100周年という記念すべき年ですが
DLの発売中止 V3も旧製品落ち J5も在庫徐々に減少中でしょうか

大変惜しいですけれども もうちょっと頑張って頂きたいのです。 

私的にはNikon 1はとても気に入っていて
サブカメラのナンバー1として今も愛用しています。使用頻度はとても高いです。

高級シリーズのコンデジ(レンズ交換できないタイプ)は多種多様 多くのメーカーから乱立しましたが Nikon1さえ持っていれば それらの誘惑に負けることはありませんでした。

Nikon1に今後 後継機が出そうもない?のはとても痛いですが
逆に希少価値により 現行機種を末永く使い続けるつもりです。

何より(センサが小さいのでがっかりされた方は多かったですが)
小型機に必要十分なスペックと、専用レンズの小型軽量高性能設計
もっとも重要なAF速度(爆速)とカラーバランス(オートでもいい感じのトーン)は最適で、実用十分な精度をJ1、V1から出してきたところは、さすがに老舗の開発陣の実力と唸らせる力がありました。
 一方、センササイズの割に、ボディーが若干大きめなのと、デザインに個性があった(V1)のが微妙に人気に影響したのかもしれません)

割と玄人受けする機種で、プロカメラマンがサブカメラとしてNikon1を愛用しているという話は結構聞かれました。(メモカメラ最強との噂も・・・)

高感度、暗部の再現性ではセンササイズ故やや厳しくなるものの
明所、低感度設定でしっかり構えてきちんと撮影した一枚一枚は
十分に仕事に使えるレベルの絵を出す能力を持っていました。

フルサイズの一眼を使うのを控えたいフォーマルな席や、
シャッター音を抑えたい舞台や式典では、外に選択肢がないという存在でもありました。
電子シャッターを使った完全無音撮影で、ローリングシャッター現象が目立たない しかもオートでもそれなりのカラーバランスの絵を出してくるのは気持ち的にとても楽なのです。(この辺はいろいろと苦労してきた方ほど分かるツボかと・・・)

さりげなくメモ代わりにコンパクトカメラで撮影している風でありながら、記録された写真は十分に納品可能な品質 というのはとても重要な所です。

最近はスマホのカメラ性能の大幅な向上でコンパクトミラーレスの存在意義が薄くなっておりますが、わずかな差とは言え、画質が安定していて、レンズの交換が可能で、AF性能もずば抜けていて、携帯に不自由しないサブカメラとして NIKON1は今も心強い存在です。

例えばロケの際にスタッフが足りなくて、帯同していた同僚や後輩にサブカメラを託して適当に撮っておいて、と頼むようなやり方でNikon1を素人にいきなり手渡ししても、撮影された写真や動画は結構使える絵が撮れていて、その写真で救われた ということもありました。

レンズもなかなか優秀で、それぞれのレンズの特徴を掴んだ上でしっかりフレーミングして撮影すると 期待以上の絵を記録してくれました。

特にお気に入りは11−27.5(手ぶれしなければ最高)18.5(解放でも絞っても秀逸)30−110(切り取り用) 辺りです。
懐にも優しいです。

そういう意味でニコワンは本当の名機 銘レンズですね しかも市場価格は申し訳ないぐらいお手軽です

荷物の制限される長期海外出張やフォーマルな席にはかならすバックの奥にニコワンを忍ばせて携行しています。

もし業績が回復されましたら、いつの日かJ5かV3の後継機を出して欲しい と切望しております。

そんなにコストをかけなくて良いと思うのです
例えばJ5は基本性能が優秀ですからDL用に用意した技術と融合して痒いところに手が届くようなマイナーチェンジが出来たら最高です。

ファンの妄想でしかありませんがDL用のファインダーを内蔵したJ5はV5になります。
4K 30Pでマニュアル撮影できたら最高です。
トーンカーブは後からグレーディングできるような仕様も必要でしょう
音声は当然外部入力端子を付けて 入力レベルがマニュアル調整可能に

4K時代に求められている潜在的なニーズ すなわちスチルよりもショートムービーの要求が高い に 柔軟にフィットさせることができたら
本来のニコン1の使命が果たせる(プロ、準プロ仕様)と思うのです。

ニコン1マウントは 裏面照射CCDの性能向上と動画4K撮影機(プロ、準プロ用) の流れから、将来 、丁度良いところに位置していることに気づく筈です。

社外レンズやアダプターによる他社レンズを使いやすくする、AEやフォーカスアシストなど (これまでは社外品に対して冷淡でした Mモードしか使えないのは時代錯誤です)

動画の作品作りでは高画質の優先度は必ずしも高くなく、対象を浮かび上がらせる描写力や音声の品質が問われます。ニコン1の専用レンズはAF精度が高く静かなのでムービーにも対応しますが、他社のオールドレンズ、特に往年のCマウントレンズとの組み合わせは そのセンサーサイズから、動画映像表現に様々な可能性を広げます

 超望遠とマクロ領域の手持ち撮影 は、(ユーザーが本気で取り組めば)おそらくニコン1の独壇場になるのではないかとすら思われる世界です。
超望遠には銘レンズの70−300や、アダプター経由でFマウントのレンズ群との組み合わせがありますが、マクロは手薄です。 
 ニッコールは伝統的にマクロレンズが強いので、20mm辺りの等倍撮影可能なマクロレンズは出来ないものでしょうか?照明用のLEDリングライトをビルトインすれば、業務用接写 例えば医療分野や科学撮影、工業用記録写真など 手堅い分野は存在します。ニコンはもともとこの分野で圧倒的な強さを持っている会社でした。もう一度本来の立ち位置に戻るというのは良いのではないでしょうか。

 是非自信を持ってニコン1の継続機種を出して頂きたいものです。





Vシリーズ、J3 J5のお値打ち品に出会ったら 迷わず速攻ゲット をお勧めします。



2017年10月9日月曜日

そろそろSummaryの必要な時期かもしれないので・・一応書きます(爆)3 変化球しか知らなかった私達

前稿から続く
シネマ黄金時代、音響システムに叡智と資金が集中していた時代、ベル研 ウエスタンエレクトリック、ALTEC JBL Stephenseから個人にも扱える(能力は限界値)の機器がリリースされる。

 このような絶妙なタイミングで理想主義的に設計された機器は、当時、原音再生、特に音声帯域の再生に重点を置く設計であるため、とにかくリアルで、迫力があって、原音に近い音が出てくるのに驚嘆します。(ただしきちんとメンテされ、調整された場合)
 
 ところが日本の一般コンシューマーにはこれらの情報はあまり伝わらず、微妙な入り方をしたようです。高嶺の花だったのが1番、また当時アメリカやヨーロッパの情報は(なにせ敗戦国でしたから)きちんと伝わりにくかったのもあるかと思います。唯一の接点は米軍関係者の交流の場で使用される機器や本格的なシアターの設備として導入されたものであったかと思います。
 日本では三菱電機が6半フルレンジ(BBCモニター基準に合致)を出し、またNHK放送局モニターを設計製造して日本のモニターは繊細な日本らしい世界を築き、またヤマハはピアノ製造技術からNS1000Mという凜としたコンパクトモニターの世界を開拓し、多くの追従者が現れました。
 さらにジャズ喫茶、ジャズブームと関連してJBLのモニターがどんどん輸入され、特に43系はあの巨大で高額な機器をよくもまあ無理して買ったなというほど大ヒットしたらしく、あの時代のステータスシンボルともなりました。

 一方、こうした流れにはなかなかついて行けない一般庶民としては、月給やボーナスをつぎ込んだり、あるいはSP一つが59800円近辺のコンポ(死語)をFM雑誌の視聴記事を頼りに買い集めて レンタルのLPレコードを再生して悦に入るのがやっとの思いでした(汗)

 高級雑誌や有名人のお宅訪問で必ず話題になる高級オーディオの世界 (いつかはクラウンやベンツに相当する いつかはJBLやタンノイだったのかもしれません)がなんとなくうらやましい・・・、いったいどんな音がするのだろうか?と想像しておりました(なつかしや・・・)

 そこに救世主の如く現れたのが長岡鉄男先生でありました。我々にも購入可能な(そこがツボ)ユニットの自作で、高級オーディオを超えるウルトラhigh CP宣言されたのには正直痺れました。 20cmのバックロードホーンで大型高級システムを超える音を出しますと断言されたのです。

 現在長岡先生に関するエピソードはいろいろと綴られていますが、当時も今も、純粋に音響関係の執筆だけで暮らせるプロの文筆家としては長岡先生が唯一に近い存在であったとの噂があります。それだけ高い人気があった。また持病の喘息でご苦労があったようで、スピーカー工作に関しては設計と音出し調整担当で、実際のSP製作自体は出版編集側が行ったようです。
 人気作家として、当時の庶民の音楽(ステレオ)への渇望を正しく読み取り、欧米製品へのあこがれと、当時盛んであった電機メーカーの試作するステレオ機器への辛口批評は(まちがいだらけの車選びと同じく)一般消費者のこころに刺さるものでありました。
 
 ところが、長岡先生の提示された自作スピーカーの世界ですが(先生の想定を超える域まで音質を高められた強者も一部には居たようですが・・・)大半は調整が難しく悲惨な音もしばしば。結局、長岡先生と全く同じ機器を買いそろえる形(長岡教と呼ばれた)となったようです。
 また雑誌の特集記事との連動という性格から、モデルチェンジも頻回に行われ、バックロードホーン20cmフルレンジ2発 から 最後は専用シアターに合わせた音響共鳴管式の巨大システムになり フォロワー達は行き場を失う結果となりました。

 長岡先生はJBLの15インチBKシステムやフロントロードシステムを良くご存知で、またそれらは日本家屋には入らないことから、日本に合わせてダウンサイジングさせつつ、同時にフルレンジ軽量コーン、強力な磁気回路のユニットの出す、切れの良いサウンドを如何に低価格に実現するかをテーマに、保守的なメーカーの間に切り込むという戦略を実行したのかもしれません。それは一部批評家陣が手放しで海外製高級品(ハイエンドオーディオ)を褒め、輸入代理店寄りの姿勢、保守的趨勢に対して、一般オーディオファンの感じていた違和感、反骨精神を汲み取る形となり、草の根革命家的な一種の熱狂を引き起こしたのかもしれません。

 しかしながら、小口径フルレンジはとても敏感で、なおかつホーンの低域は量感が不足し、量感を求めると不明瞭でボワンとした音になりやすく、幅広く音楽を愉しむにはむしろ向いていない機器でした。長岡先生は高音質レコード批評で有名ですが、頻繁にレコードを取り替えながら音の変化に重点を置いて視聴するタイプであったらしく、長時間ゆったりと心地よい音楽に浸る姿は少なかったとの噂です。
 プロのライターとして、書くことに専念して、オーディオは仕事として取り組んでいた・・・ そうした意味では 我々消費者(特に音楽を聴きたい側)の本当の意味での指南役として相応しかったのかは・・・・ 今となっては判りません。

 とにかく、長岡先生はJBLの15インチBKシステムやフロントロードシステムの能力を知っており、それを一つの目標として挑戦し、独自の世界(原音再生 爆音 民族音楽)に入っていったようです。

 我々一般人としては、そこまでエッジな音響を求めているわけではなく、どちらかというと音楽を心ゆくまで愉しみたい(中道)方ですから、そうした普通のいい音、Stereo本来の世界を取り戻したいと思います。

 最近流行の小口径ユニットのアレー方式スピーカーは高い割には音が正直寂しい感じがしますので、憧れの源であり、長岡先生の密かな目標でもあった、Altec、JBL、Tru-sonicの黄金期の製品 音楽性を意識し豊かな時代に設計製造された製品群が手の届くところに来た今こそ、それらの世界を手に入れたいのです。

 管球王国は、そうしたニーズにズバリ応えていますね。

 
 
 
 

そろそろSummaryの必要な時期かもしれないので・・一応書きます(爆)2

 それで、いろいろと遍歴してきた結論から言いますと、バランスの良い黄金期の15インチフルレンジ=同軸2ウエイ 高域はホーン型 を選んでおけばまずはOK ということに気がつきました。そのモデルはズバリ アルティック604E、605シリーズ、Tru-sonic206AXAです。
 なぜか、は当ブログをご覧いただくとなんとなく説明しています。きちんとした理由があって、音響理論が確立され、それを真正面から精密に具現化して、原音再生と音楽性を両立させようと優秀なエンジニアとアーティストが取り組んだ時代、しかも経済的に豊かな時代に支えられて構築されたユニット達なのです。
 この時代の前はベル研がレコード、電話やトーキーに関する研究を当時の最も優秀な研究者と開拓していた時代で、そのころには様々な理論、設計手法、部品が試行錯誤の中で確立されていきました。
 現在珍重されるウエスタンエレクトリックのハイエンド機器はまさにそれらの実証実験+大規模なシアター向けに予算度外視で設計製造されたものです。

 当時と今日の決定的な技術の違いは半導体の技術の有無で、高効率な増幅器(アンプ)を製造することが困難であったため、高効率なスピーカー設計の比重は極めて高いものとなりました。
 効率を改善する方法としては、励磁式、コンプレッションホーン、15インチまたは18インチコーンスピーカー 大型のボックス 大型の中域ホーン
 アンプ側は大型の3極管、低歪み大出力の回路設計、優秀なトランスなど

こうして列挙してみると、今音がいいと言われる機器のオンパレードです。300Bや211、WE555 ジェンセンの励磁式18インチなど代表格ですね

 ところが特殊用途に開発された(大規模シアター用)機器なのでここまで我々は手を出す必要はなくて、これらの開発の反省からもう少し汎用性を高めた機器にシフトし始めたものを狙うのがお勧めですと言いたいのです。希少性が高く有名な製品は買うのもメンテするのも大変で部屋も専用の広さが必要になってしまいますので音楽を聴く前に収集とチューニングで貴重な人生の時間を消費してしまいます(涙目)
 しかも高効率のホーンには時間のズレという大問題があって、当時のホーン設計は広がり角が狭い特にホーン長の長いものが多いので位相差を通り越して時間差、山びこぐらい遅くなったり、また水道管や土管の奥から響くような独特の癖が出ている(それがたまらないという方々も大勢いらっしゃいますが音楽を聴くには特に必要でもない世界かと)

 そこでそれらの系譜から生み出されたのが前述の15インチユニット達なのです。
18インチは大きくフルレンジ設計はきつい(中域ドライバーの音域を下げる必要がある)のと、コーン紙が重くて総合的な音の調整が困難、その反省からサイズを15インチに縮小して、音圧が必要な場合はホーン付のボックスに入れるか、15インチユニットを複数同時に駆動すればよいというのが当時の結論だったようです。それは理論と実践の中から生み出された最適解でした。
 なぜに15インチウーファーではなくてフルレンジなのか は 経験の豊かな皆様にはおわかりかと思いますが我々は低音を聞いているのではなくて常に中音域(音声帯域)を聴いている。また中域ユニットとの繋がりを考えるとフルレンジが有利、という事実があるからです。
 アイコニック iconic(電子たばこみたいな名前ですね) JBL Altecの歴史 シャラーホーンで検索すると出てきますが
 15インチフルレンジを大型のバスレフ箱に入れたもの(後の銀箱?当時は黒)もしくは、15インチドライバー(515の前身)をフロントロードホーン付の箱に入れたもの(後のA5,A7)に、3インチコンプレッションドライバー(後の288)と組み合わせた2ウエイシステムで、レコーディングスタジオや小規模シアター用に設計されました。

 後のAltecやJBL技術者達(ベル研や映画会社からの仕事を請け負っていた設計製造会社と思われます)が開発に携わった、現場の経験から生み出された傑作です。

 今も、JBLのプロフェッショナルシリーズのフロントボックスやら、バックロードホーンに15インチフルレンジのドライバーユニットを入れたカスタム構成がジャズ試聴の定番になっていますが、そのルーツを辿ると、これらのWE系の小規模システムに繋がるようです。
 励磁式の2ウエイでは可搬性に課題があったため、マグネットに置き換え、同軸とした604シリーズ(Duplex)もこの頃の設計(海軍からの依頼による潜水艦のソナー用という説もあり、定かではない)らしいのですが (これが後の 612銀箱になる。15インチフルレンジの部分は基本設計が同じなので箱をそのまま使用したのかもしれない。)

これら米国の技術(604や515や288)はイギリスに渡り、一部再設計(パルメコという音響会社が技術提携下によりUKで製造したようである フレーム以外はほとんど604と同一)を受けてBBC(非常に凝った、ダブルバスレフ方式の箱との組み合わせています)に採用されたり、またAltec製品はアビーロードスタジオにも採用されていたようです。ビートルズのレコーディングには605銀箱入りが使われたという噂もあります。

 この頃の技術は今もマニアにしっかりと継承されています。

 例えば国際的に有名な(かってステレオ某誌に寄稿しておられた)某小説作家は15インチフルレンジ(D131?)をバックロード箱に入れ、コンプレッションドライバーの組み合わせてジャズをお聴きとの噂です。

 また某みちのくのジャズ喫茶では巨大な箱に15インチフルレンジから派生したウーファー2発(軽量なコーンなので巨大な箱が必要) +コンプレッションドライバーの組み合わになっていますね。

 ここから派生した技術はシアター、スタジオ向けのAltec、 一般(ハイエンド)向けにはJBLとStephense(スチーブンス)に のれん分けしたようです。
この区分(一般、スタジオ、シアター)は絶対的なモノではなく当時15インチをきちんと設計製造できるヒト、会社は少なかったので、エンジニアが設計を兼務していたり、異動しながら設計システム構築したり、独立後は良きライバルとして、またパーツ、あるいはユニットを、いろいろと融通しあっているような印象があります。

 敢えて言えば

 Altecはシアターやスタジオで音楽にじっくり長時間、音作りに向くバランス重視、モニター用設計
(日本のレコーディングスタジオやシアターの標準器として長らく君臨しました)

 JBLはAltecに対抗して(?)あえて逆相や逆巻き、巨大ボイスコイルにして、ピリッとエッジを立てるジャズ向けの個性を付けた 迫力+趣味性
 (進駐軍の若手将校にJBLファンがいたらしく その影響で日本にJBLが入ってきたのかもしれません。その後山水が代理店を務めて大流行しました。)

 Stephense(スチーブンス)はジャズからクラッシックまで幅広く長時間音楽に浸りきる音楽性を加味した味付け
 (代理店がないまま 日本に紹介されることはありませんでした 日本人にもっとも向く音だと思いますが日本ではほとんど知名度がなく、残念です。)



とにかく試して聴いてビックリなのがきちんと設計された15インチフルレンジ群なのです。
 

そろそろSummaryの必要な時期かもしれないので・・一応書きます(爆)1

オーディオ遍歴と申しますか かれこれ40年ぐらい?やってきてるので・・・それなりに纏めでも書こうかなと思いました。といっても当ブログを閲覧される方は(おそらく極めて)少ないので路傍の石のつぶやきでございます。

 そもそも私たちはなんでオーディオに嵌ってしまったのでしょうか?それはやっぱり昔は音楽ソースに飢えていたからだと思うのです。深夜放送やFM、LPで聞く音楽は格別な愉しみでありました。海外の音楽に衝撃を受けたり、国内のエッジなミュージシャンの活動を追いかけたり、真剣に聴いてました。そんな時代でしたから いい音で聴ける ということは無上の幸せでありました。

 現在はネットで音楽聴き放題の時代ですから好きなときに好きな音楽をいくらでも聴けますし海外のコンサートに行ったり、国内でもメジャーなミュージシャンの生の音を聴けるのですから全く世界が違います。

 また音楽鑑賞(死語に近い)の位置づけも違っていて、目を閉じて耳に全精力を傾けて聴く 時代ではなく、youtube等の映像に音楽が付帯してる感じだったり、BGMだったり気軽なものであります。スピーカーも小型化してBluetooth接続、あるいはヘッドフォーンがメジャーで高度に趣味化してヘッドフォーンは異常に進化を遂げています。Staxがここまで再評価され、コンデンサー型ヘッドフォーンが海外からリリースされるとは驚きでもあります。(Staxは進みすぎていたのでしょうか?今になって世界が追いついた)

 おじさんオーディオ好きにとって、日本のオーディオが盛んだった頃と比べて寂しさはつきまといますが、逆に達観してきて、あの熱狂に対してある種の懐かしさ、眩しい感じを思い起こすのです。
 
 最近LPを聴く人が増えてきたらしく、若干オーディオの再興期に入って嬉しい感じもあります。高度に趣味化したオーディオは残る可能性は高いです。そういった意味で、デジタル化で再興を果たした?写真と同様に 高度に趣味化するとオーディオ(ピュアオーディオ)がまた盛んになる可能性は充分にあります。

 いい耳を持っていて探求心のある方が、本当にいい音響機器を揃えたい! という場合に、ネットで検索して これ買ってみた あるいは家電量販店で相談してスピーカー買ってみたら 最初は若干ガッカリ・・・ となったケース 
 それからどうやったら自分好みのステレオ機器に達するのか  というのは現代でもなかなか興味深い領域です。

 まず重要なのは自分が本当に好きな音楽、領域が判っていることと、好みの音がはっきりしていると 攻めやすい ような気がします。またライブのリアルサイズの音楽に浸りきりたい というのであれば やる価値はある!
と思うのです。

 結論から言いますと、原音か、ライブのリアルサイズの音楽に(ヘッドフォンじゃなくて)浸りきりたい、そして(どっちかというと)色々なジャンルの音楽を幅広くご機嫌で聴きたい というのであれば、今主流の小口径小型スピーカーは将来的には止めたほうがいいですよ~~と断言致します。

 そしてどうせ聴くならいつの日か、15インチの大型システムをお勧めします。

15インチの世界は日本では昔からJBLの独壇場で、ヤフオクやショップに中古品がどっさりありますが・・・・ 結構しんどい世界です。

 日本では死ぬほどJBLの大型システム(特に43シリーズ)が売れたらしいです。(本国ではセールスはそれほどでもなく、またスタジオにも入らなかったという噂です 旧JBLは音そのものよりも・・・・ とにかく大ブーム、ファッションでしたから・・・)

ジャズやロックで大音量、ギンギンギラギラな高域、ドロドロな低域お好きでしたら旧JBLでも良いです が
幅広くいろいろな音楽を聴くなら 旧JBL以外にいろいろ選択肢あります。

 現代のJBLのK2やD5000シリーズはずいぶんと洗練され、音もスムーズになりましたが・・ 高級になって 普通には手の届かない領域になってしまいました。(自宅に導入できないこともないが 音楽にそれだけ投資するのは正直キツイし家族も大反対! 汗
(あと、音がちょっと洗練しすぎ?  少々おとなしい感じですよね 汗)





 



2017年10月2日月曜日

アメリカ音響全盛期 ビンテージ品の楽しみ方

最近の某ステレオ雑誌に、某イタリア車コレクションで有名な方のオーディオシステムの紹介が出ていた。
 ウエスタンの全盛期のドライバーユニットを軸に、復刻された18インチ低域ドライバーとフロントロードボックス、ツイー ターを組み合わせ、特にドライバーに組み合わせているホーンは現代的な設計のものを採用されている。
 ある種究極な組み合わせと思われます。また(懐古趣味、オリジナルコレクターではなく)新旧を巧みに組み合わせている所が流石と思わせる。オーディオに関して相当なキャリアをお持ちと推測されました。
 その最新システムの前はTru-sonicのシステムを使っておられたとのことで、やっぱりね
という感じでございました。
 この辺のクラスを知ってしまうと、もはや最新機器などどうでもよくなってしまう感じであります。(もちろん最新機種も、すごいのはすごい ですけれども なんか 違う様な気がします 完璧な箱庭を狙うのも一つの方向性とは思いますが、 原音+αの世界を知ってしまいますと なんか自分の目指している世界とは違うかな とか 思います 率直に・・・)

 また、某真空管専門誌に、アルティック604シリーズ聴き比べ 特集があり、これもまたツボな企画でございました。使用されている機材がまた流石でありまして、さらに箱のチューニングなどベテラン揃いだからこそできる深い視聴記事でありました。結論としましては(ぜひお読みくださいませ)604Eが最高評価を受けておりました。やっぱりねといいますか、わたくしもすべてのモデルを最高のコンディションで聞き比べる様な幸運には至っておりませんので、限られた経験からしか言えませんが、604 E はズバ抜けてバランスが良い名器と言えるのではないかと密かに思っておりましたので、やはり!と思ってしまいました。
 といいますのは、604のオリジナル(無印、TypeA)のフィックスドエッジやベークドダンパーのバージョンは、なんとなく乾いた感じの音、どうやら周波数の高い領域にピークが出やすい(紙っぽいキャラクターを感じやすい甲高い個性)特徴があるようで、現代的にはその辺が最新のhighbid録音との相性に限界があって、ピーク抑制のためにデジタルフィルターを入れて抑え込むのもどうかな・・・と若干躊躇してしまうところがあります。
 逆に新しいほうの604G以降は、ロックやブラック音楽全盛となりドロドロした低域、打ち込み系の時代で、JBLの4ウエイシステムや、その後のTADとの戦いになり、ジリ貧となっていた時期であるため、得意な中域の張り、情報量、2ウエイのバランスよりも、低域拡大を狙ってM0を増やしたモデルとなっており、高音ドライバーと中域の間の繋がりが悪化してしまったのが若干残念な感じでありました。もちろん箱も620の大きな箱に入れるのが前提で、銀箱に入れたら寂しい結果になってしまいます。620は今日的に自宅に入れるには(専用オーディオルームが何部屋もある方であれば問題ないでしょうか)マンション暮らしには大きすぎるかなと思います。
 604Eを入手してびっくりしたのは、そのコーン紙の軽さとダンパーの繊細さでした。特にダンパーはナイロンメッシュの薄いものに同心円のリブを付けた他のメーカーには見られないもので、いかに初動感度を高めるかに腐心した開発陣の熱意が感じられるものです。もし、程度の良い604Eに巡り会えたら、ぜひ入手していただいて、オリジナルのコーンとダンパーだけは交換しないことをお勧めします。(リコーンキットで配布されているもので、オリジナルと同じEタイプのダンパーを見たことはありません リコーンすると音が変わってしまいます)
 注意点としては、オリジナルのコーンやダンパーは経年劣化を受けていて、へたっているものが大多数であるということです。ボイスコイルが磁気回路に接触している個体も少なくありません。センターがズレれば当然音は急激に劣化します。
 リペアショップとしては、修理後のクレームは避けたいところですので、リコーンを進めると思いますが、なんとかオリジナルのままでセンタリングしてもらう方向でベテランのエンジニアに頼んでみてはいかがでしょうか?

Tru-sonicのP52や206AXはフィックスドエッジなので保存状態の良い個体はエッジの補修で復活できる場合もあります。リコーンには同時代の15インチユニットから移植という手があります。Tru-sonicのP52や206AXは604Eのような工夫はないので、高域にピークが出やすく、オリジナルのネットワーク回路では古い感じの音になりやすいのですが、最新のデジタルチャンネルデバイダーを使用して高域のピークをバッサリとカットし、クロス500前後の中域ホーン(最新のホーン設計のもの)を使えば、原音に近いような中域と、歯切れの良い低域に驚嘆します
 
  

2017年1月7日土曜日

Kodak DCS ProBackのファームウエア

Kodak DCS ProBack

まだ使っておられる方はいらっしゃいますかね。?
ネットでフィルムを探していたら
フィルムが絶滅直前であることに気づきました。
FP100Cも製造中止になっていますし。
チェキぐらいですね。残っているのは・・・・

フィルムが高騰しています。ラインナップも縮小しています。
largeフォーマットは特に危機的状況かも。
さすがに35mmフィルムは残ると思いますが。
120はギリギリ?
4x5や8x10は風前の灯火か?
ガラクタの大判用の銘レンズを捨てるのは忍びないので
特にハッセル用は銘レンズ揃いなので・・・
デジタルバックを使って・・・という線はあるかもしれません。
ただし、適当な機種はあまりないですし、最近の機種は高いです。
Kodak DCS ProBackは時々処分価格で出ていたりします。
これは使いこなしが難しいのですが本HPにやり方を少し書いています。
使うコツは、電源の電流量の要求が巨大なのでバッテリーは安定化した強いものを用意しましょう。(純正のACアダプタを見ればわかりますよね)
最近ですと、リチウムポリマー電池は優秀なので1850を3つ直列に繋いで使っていますがそれでも書き込みに入る前に電源不足で時々落ちます(涙目)

シンクロエラーメッセージに関しては、
https://www.dpreview.com/forums/post/58058880
からダウンロードしたファームにアップするとかなり減ります。

海外のユーザー様がパッチを当ててくださったようですが
大変ありがたいことです。